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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)2105号 判決 1958年7月22日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人浜岡弘の弁護人向江璋悦、同安西義明の上告趣意第一点について。

論旨は量刑不当の主張に帰し適法な上告理由とならない。

同第二点について。

論旨は憲法三六条違反を主張するけれども、その理由なきことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)三二三号同二三年六月二三日大法廷判決等)によってしばしば示された趣旨に徴して明らかである。

同第三点について。

論旨は、麻薬取締法附則一六号によって本件に適用された旧麻薬取締法四条三号、五七条の二の規定が憲法一一条及び一三条に違反すると主張する。しかし麻薬、殊に本件違反物件である塩酸ヂアセチルモルヒネは、その用法によっては人の心身にきわめて危険な害悪を生ずるおそれがあるから、麻薬取締法は公共の保健衛生の要請上、その取扱について厳重な制限規定を設けたものであって、かかる制限は公共の福祉のため必要であるから、右制限規定が憲法一一条及び一三条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二九年(あ)一四〇〇号、同三一年一二月二六日大法廷判決)の趣旨に徴して明らかである。論旨は理由がない。

同第四点について。

論旨は検察官の求刑が違憲であると主張するけれども、原審において主張、判断を経ていない事項に関する主張であるから、適法な上告理由とならない。(検察官の具体的求刑が違法でないとの所論引用の当裁判所の判例は正当であって、今これを改める必要は認められない。)

被告人片桐増澄及び同河本昭郎の弁護人内田弘文の上告趣意第一点について。

論旨は先ず原判決が憲法三六条に違反すると主張するけれども、その理由なきことは前記向江、安西両弁護人の上告趣意第二点について説明したとおりである。

次に論旨は原判決が憲法三八条に違反すると主張する。しかし被告人両名の司法警察員に対する各自白が所論のように任意性を欠くものと認められる資料は存しないので、所論違憲の主張はその前提を欠き採用できない。(なお被告人等全員は第一審公判でそれぞれ自白している。また本件麻薬の現品も存在している。)

同第二点は量刑不当の主張であり、同第三点は事実誤認の主張であって、いずれも適法な上告理由とならない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己)

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